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私立中高進学通信

2025年8月号

今こそ心の教育

駒込中学校

農業体験と仏教修行が育む
感謝の念と寛容のまなざし

5月に行われた今年度の中2校外学習の田植え。「食」について思いをめぐらすことが、10月の日光山研修につながります。

5月に行われた今年度の中2校外学習の田植え。
「食」について思いをめぐらすことが、10月の日光山研修につながります。

田植えで知る稲作文化と
食事のありがたみ
学年主任・数学科/黒木隆輝先生学年主任・数学科/黒木隆輝先生

 天台宗の開祖・最澄が書き残した言葉「一隅を照らす」を教育理念に、仏教的情操教育で人との温かな結びつきを大切にする心を育んでいる駒込。

 利他の精神をもつことが、現代社会を生きるうえで不可欠な力であると位置づけ、中2の「日光山研修」、高1の「比叡山研修」など本格的な仏教の修行生活を送る非日常体験から、食育の一環として行っている給食など日常の学校生活まで、生徒たちの内面を成長させるさまざまな機会を設けています。

 その一つが5月に実施される中2の農業体験プログラムです。郊外の農地に出向き、農業指導の専門家のもと、田植えや玉ねぎの収穫を体験します。

「本校の校外学習は、生徒たちの心を育むと同時に、教科学習としての側面もあります。中1の校外学習の理科的なアプローチに対し、中2の農業体験では事前事後学習も含め、田植えから収穫までの年間サイクルや歴史的背景を学ぶ社会科の学びにつながっています」(学年主任/黒木隆輝先生)

 田植えでは学年全員が列になり、1人が3つの苗を手植えしていきます。

「水田に入る経験自体が初めてという生徒が大多数なので、足を踏み入れた瞬間に泥の感触に声を上げたり、ザリガニなど生き物を見つけて驚いたりと、それはにぎやかです」

 生徒たちは農業体験の事前事後学習として、一人ひとりが「お米新聞」というデジタル新聞を発行します。

「わずか3つの苗が、幼児のお茶碗一杯分のお米になるそうです。こんな少しの苗からそれだけの量のお米が収穫できると知って感動したことが、多くの『お米新聞』から素直に伝わってきます。また、便利な農業機械を使わず、自らの手で田植えや収穫を体験することによって、生徒たちは農作業の大変さや古来の伝統を知り、食事に対してのありがたみも感じるようになります。農作業後に出される、自然に囲まれた中でいただくおむすびと豚汁のおいしさも格別なようで、生産者の方や日々の食事を用意してくれる保護者への感謝の念が深まる貴重な機会となっています。例年、自分が植えた稲の生育を確認するために、家族で現地を再訪する生徒もいるんですよ」

 感謝の気持ちをもって食事をいただくことは、10月に実施される日光山研修でも共通する大切なテーマです。

「日光山研修と比叡山研修は、本校ならではのプログラムといえます。修学旅行などとは異なり、レクリエーションの時間はなく、自己を見つめ直す場として修行生活を体験します」

田植えに続き、玉ねぎの収穫にもトライ。植え付け~収穫までをセットで作業することにより、農業のサイクルを肌で理解します。

田植えに続き、玉ねぎの収穫にもトライ。
植え付け~収穫までをセットで作業することにより、
農業のサイクルを肌で理解します。

自己と他者を理解し
「一隅を照らす」存在に

 日光山研修では、日光山輪王寺に赴き、1泊2日のスケジュールのなかで僧侶が指導にあたり、写経、坐禅止観、護摩行、法話などを行っていきます。

「写経では正座をして集中力を高め、お唱えする経典の文字を写すことに没頭します。坐禅止観は、半眼といわれる坐禅の姿勢で15~20分間静かに黙想します。護摩行は研修前に書いた護摩木を焚き上げながら般若心経を唱えますが、本校では週に1回の朝礼で読経をする『勤行儀』がありますので、中2ともなると、教本に頼らず自然にフレーズを唱えられる生徒もいます」

 一連の修行で生徒たちが最も厳しさを感じるのは、計3回の食事の時間だと黒木先生は言います。

「仏教の食事作法に則り、出された精進料理を残さずいただきます。料理を味わう時や、箸や椀など食器に触れる時も音を一切立ててはいけない完全黙食です。米一粒たりとも残してはいけませんので、食べ終わりには器がきれいになるようお茶をそそぎ、最後の一滴まで飲み干す洗鉢せんぱつをします。
 食事の前後には、『食前観』『食後観』という言葉を唱えますが、これは普段の給食でも行っています。食事は命をいただくこと。生き物への感謝の念を抱くこともちろん、器など目の前にある『形あるもの』を大切に扱おうとする気持ちも養われます」

 日光山研修の一環として校内で行う写仏も含め、中学年代に精神修養の体験をすることで、生徒たちの内面に明らかな変化が見られるそうです。

「今まで生活する中で考えもしなかったことを体験することで、視野が広がり、深い考察ができるようになると実感します。感想文を読むと、教員でさえ想定していなかった成長の跡を感じることが多々あります。
 食べ物や生命のありがたさ、当たり前に存在すると思っていたものが、実はそうではないと気づくことで、他者との向き合い方にも変化が見られます。人の意見に無自覚に同調するのでもなく、自分の意見を押し付けることもなく、他者の話をしっかり聞いて理解しようとする姿勢が身につきます。それは現代社会を生きていくうえで大切な力です。社会で自分を活かせるのも周囲との結びつきだと思いますので、生徒には本校の学びを通して、バランスの良い人間関係が築ける寛大な心を培ってもらいたいと思っています。それぞれが輝ける場所を見つけて『一隅を照らす』存在になってほしいですね」

日光山研修の精進料理の食事は、1日目の昼と夜、2日目朝の計3回。
食前観で手を合わせ、沈黙を保って食します。

法話は、輪王寺の僧侶の方からお話を聞く時間。心を鎮め、仏教の教えに耳を傾けます。法話は、輪王寺の僧侶の方からお話を聞く時間。心を鎮め、仏教の教えに耳を傾けます。
読経しながら、護摩木を焚き上げる護摩行。煩悩を焼き尽くす意味があります。読経しながら、護摩木を焚き上げる護摩行。煩悩を焼き尽くす意味があります。
心を「無」にして、身体は微動だにせず、己の内面と向き合う坐禅止観の修行。心を「無」にして、身体は微動だにせず、己の内面と向き合う坐禅止観の修行。
一人ひとり机に向かって写経に集中します。没頭することで見えてくるものがあります。一人ひとり机に向かって写経に集中します。没頭することで見えてくるものがあります。

(この記事は『私立中高進学通信2025年8月号』に掲載しました。)

駒込中学校  

〒113-0022 東京都文京区千駄木5-6-25
TEL:03-3828-4141

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